亀田総合病院にて・・


     平成14年4月23日(火曜日)

     明日は手術。
     慣れないベッドと枕のせいか少し頭が痛い。
     手術も全身麻酔も初めてである。
     麻酔から覚めなかったらどうしよう・・なんてことまで考えたりしてしまう。

     2人部屋で同室の平野さんは79歳。股関節の手術をして1月からずっと入院しているとのこと。
     やっと歩行器を使って少しずつ歩けるようになり、あと3週間で退院の予定だという。
     手術後の6週間は足を動かしてはいけないということで、大変辛かったそうだ。
     私の手術のことを話すと・・「腕なんか簡単だよ。1週間くらいの入院なんて、ここを見に来たみたいなもんだ。ハハハッ!」と笑われてしまった。

     看護婦さんに、このフロアだけで何人くらい入院しているのかと尋ねると、100人くらいいるかも・・と言っていた。
     病院全体だと800人くらいになることもあるそうだ。
     毎日こんなにも多くの人たちが、入院して手術をうけたり治療したりしているのかと思う。

     ここ整形外科は8階(最上階)なので、窓からは鴨川の海が一望できる。。
     私のベッドは窓際ではないのだけれど、廊下を歩いていくと東側にガラス張りのコーナーがある。
     ジュースの自販機と長椅子が2つ置いてあるだけなのだが、その眺めのよさにいつも数人の患者たちが集まっている。
     皆あまり話もせずに思い思いにくつろいでいるようだ。
     整形外科のせいか、車椅子の人が多い。

     食事はメニューが2種類あって選択できるようになっている。
     今日、一週間分の表がきたので好きなほうに○をつけて出しておいた。
     手術前なので私は今日の夜から絶食になるらしい。
     今日はお風呂に入れるというので3時半に予約した。
     お風呂は明日から何日入れないのだろう?
     
     本を5冊もってきたのだが、昨日3冊読んでしまった。
     あとで下のコンビニに行って買ってきておこうと思う。手術後は身軽に動けなくなるかもしれないから・・
     テレビも借りたのだが、あまり見る気もしない。
     ただ、入院中とはいえ下のコンビニまででも・・パジャマで買い物に行くのはちょっと抵抗がある。
     ここの病院は外からの見舞い客も多いし、できれば知ってる人とは会いたくないものだ。

     時々妙に暑くなる。
     病院の動かない空気のせいか・・はたまた更年期症状の始まりなのか??

     入院して今まで・・2日目の午後2時半現在・・術後の点滴のためのアレルギー検査(注射2本)をしただけ。
     あとで手術の麻酔等の説明があると言っていた。
     今日担当の看護婦さんは20才過ぎにしか見えないが、もう少し上なのだろう・・かわいいけれどテキパキしっかりしている。
     

     4時30分。
     田中先生が来てくれたので診断書をお願いした。
     脂肪腫?はきれいにとれるかどうか聞くと・・神経にはりついていなければ・・という答えだった。
     手術には中西部長がいっしょにつく・・と言う。田中先生は若いので手術の経験が少ないのかもしれない。
     主治医は志賀先生と書いてある。 診察と手術を担当する医師と、主治医は違うということなんだ・・?





     4月28日(日曜日)
     
     手術は無事終り、明日退院の予定である。神経や筋肉の大切なところにはさわらずきれいにとれたそうで・・ホッとした。
     手術室に入ったところまでは覚えているものの、あとは全くわからないままだった。
     手術後目覚めてすぐに?ビーカーに入った”とったもの”を見せてもらったことは、おぼろげながら記憶にある。
     きれいなクリーム色の”それ”は 、ビーカーの液体の中でゆらゆらしていたような気がする。
     心配していた組織検査はようやく結果がでて、良性のものだったということ・・よかった〜!

     初めての手術だったので、前後のことを少しずつでも記録しておこうと思っていたのだが・・
     手術後は左腕は動かせないし、右は手首に点滴の針を刺したままだったので今日までペンはもてなかった。
     でも、そうでなくても25日はめまいと吐き気でそれどころではなかったし、26日も目の焦点がうまく定まらないような感じで・・
     27日の夜になってようやく落ち着いてきたような状態。 ずっとあった微熱もなくなったようだ。

     手術のあとの傷は10cmくらいだろうか? 自分ではまだ正視できない。
     腕はまだかなり腫れて熱をもっているので、常に氷枕で冷やしている。 内出血した血液がおりてきて肘のあたりまでが紫色だ。
     ただ不思議なくらい痛みはない。先生の話によると筋肉を縫って表皮を縫って、2重になっているらしい。
     もちろんさわったり力を入れたりすればチクチクしたり重苦しく痛んだりはするのだが、何もしなければ痛くないのは予想外でうれしい。
     抜糸はいつになるんだろう・・

     昨日と今日、となりの平野さんは外泊だ。
     昨日の夜は久しぶりによく眠れた。 と、言うのも・・平野さんはいつも・・いびきが・・すごい。
     平野さんはやさしいのだ。「ゆっくり眠らなくちゃだめだよ。もう先生に任せて、余分なことは考えないで、とにかくゆっくり眠りなさいよ」・・と言う。
     眠れないんです・・いびきがすごくて・・とは言えなかった。
     そのため昼間にウトウトすると、「具合悪いの?何でかねえ?風邪ひいてるんじゃないの?そうだよ、ちょっと咳もでてるし・・」などと心配してくれる。
     いい人なんだけどなあ〜・・でも私は少々・・お疲れモードなのです。



    
     ほんの一週間だけの入院生活だったけれど、いろいろ考えることもあった・・

     治療するために入院するのだからしかたがないことなのだが・・・お風呂にも入れず髪も洗えない、鏡を見るのもおっくうになりがちな・・
     ベッドと食事とトイレだけの生活。
     長い入院生活を送らなければならない人たちは、病院という限られた環境・行動範囲の中で、病気や身体の不自由さからくるストレスをたくさん抱えて
     毎日どんなふうに考えながら、自分の気持ちを前向きにもっていこうとするのだろうか・・・
     私にはとても自信がない。気持ちも身体もボロボロになってしまいそうな気がする。

     そして、お見舞いについても・・
     お見舞いというのはありがたい気持ちの半面、人によっては家族以外には見せたくない・見られたくないこともあるということ。
     身体の自由がきかなかったり、あちらこちらチューブでつながれていたり・・
     女の人であればなおさら、やつれて髪もとかせないような状態を他の人の目にさらしたくはないだろう。
     知人が亡くなる前、「病室には誰も見舞いに来てほしくない・・」と言っていたというが、辛い気持ちがわかるような気がする。


     亀田総合病院についての評判はいろいろあるようだ。
     最新の医療設備が整っていてテレビやマスコミにもとりあげられているし、遠くから来る患者さんも多い。
     ただ、医師がすぐに変わってしまうとか、研修生のような若い先生が多いとかいうことも・・
     私も、いいイメージばかりがあったわけではなかった。

     下のコンビニに亀田総合病院の医師の書いた本がおいてあったので読んでみた。
     医師数220人。従業員数2000人。ベッド数858床とあった。 すごい数だ・・
     若い先生が多いことについては、ベテランの先生がしっかりサポートしてくれるといいと思う。
     年齢だけではないと思いつつも・・私自身、自分の手術担当の女医さんが28歳くらいだと看護婦さんに聞いたときには、正直・不安がよぎった。

     自分の入院を通しては・・・看護婦さんの手はかなり細かくゆきとどいていたと思う。
     入浴できないので足を洗ってくれたり、腕を冷やす氷枕も何度となく取替えてくれた。
     点滴や手術の際は、腕につけるネームプレートの番号と名前をその都度キチンと確認している。
     入院中はそれなりに気持ちよく過ごせた。


     とにかく、明日退院できることになってよかった。
     たとえ一週間でも、家を留守にして心おきなく入院できるのは幸せなことだ。
     家族や妹たち・・心配してくれたみんなに”ありがとう”と言いたい。